See you later.
アメリカ大陸横断当時、私の所属する広大サイクリング部に、
tssの棚田徹アナウンサーが居た。
彼は、当時、歌手ジョンデンバーの大ファンで、
コロラド州にある自宅の写真を撮ってきてくれと頼まれた。
山が連なるコロラド州に入り、ジョンデンバーの住まいが近づいたとき、
大きな問題が起こる。
正確な距離数は忘れたが、自宅のあるスノーマス(だったはず)へは、
ハイウェイで行けば約50㎞、一般道では150㎞、こんな状況に出くわした。
ハイウェイは自転車通行禁止、しかし、50㎞と150㎞、しかも田舎の道で、
車はほとんど通っていない。
少し迷ったが、ハイウェイに進路を取る。
咎められたら、「知らなかった」で通す作戦だ。
30分ほど走ったころ、1台のパトカーに止められた。2人の警察官が降りてくる。
ここは自転車は通行禁止と言っていることは分かるが、あとはチンプンカンプン。
英語がまったく聞き取れない。
「知らなかった」で通すというよりは、話が通じない旅行者状態。
しかし、ここまでは、ほぼ想定通り。後は、彼らが諦めて去るのを待つだけ。
そして、実際、その通りになった。
しかし、悲劇は、この後に起こる。
彼らは、
"See you later."
と言って去っていったのである。
直訳してみて欲しい。
"See you"→「あなたに会う」、"later"→「後で」
である。
しかも、相手はあなたを注意した警察官。
たしか6月か7月だったと思う。
灼熱の太陽が照らす中、影のないハイウェイ。
時折、大きなタンクローリーやコルベット(スポーツカー)が脇を猛スピードで通り過ぎていく。
私は、自転車を支えたまま立ち尽くす。
10分、・・・20分、・・・30分。
警察官が戻ってくるのを待つ。
頬、背中、腕、あらゆるところを汗が流れ落ちていくのが分かる。
40分、・・・50分、・・・1時間。
1時間、ひたすら待った。
そして、頭は混乱したまま、再びペダルをこぎ始めた。
"See you later" が、「じゃあ、またね」とか「バイバイ」と同じ意味の挨拶
だと知ったのは、しばらく後のことである。
